私が副会長をしていた平成29年ごろ、「認知症になっても住み慣れた地域で暮らしていけるまち」を目指して、捜索模擬訓練が行われた。
認知症支援介護予防センターから職員さんも見えて、声掛けレクチャーを受け、徘徊している方を見つけて報告するというものだった。
ここ数年はやっていないと思うが、こういう地域の取り組みも「流行り」があるのかもしれない。
各組長さんたちも参加して、グループに分かれ、行方不明者役を探す。
もちろん、行方不明者役も事前にお願いしておき、仮の名前(高倉健、吉永小百合、木村拓哉など)を決める。
私たちは、お名前、顔写真や服装、身長、年齢など予め教えられた情報を頼りに町内を歩き回った。
大人が大勢でやるかくれんぼのようだった。
偶然通りかかっただけの行方不明者役では無い方に声をかけ、怒られることもしばしば。とても怒られた。。。
鎌一本持って歩いているようなおじいちゃんや、寝巻きのような格好で家の前をうろうろしている人もいたりするため、声をかけていいものか戸惑った。
それらしき人を見つけたら、事前に教わった通り声掛けをする。
・ゆっくり近づき、おだやかに話しかける
・後ろから声をかけたり(驚かせるので)、大声を出さない
・短い言葉で、一つずつ話しかける
・こんにちは。今日は寒いですねなど、季節の挨拶をする
・少し休んでいかれませんかなどと提案する
教わっていたのに、みんな足早に近づいて取り囲んで話しかけてしまう。
探していた人を見つけた!と思ったら、誰しもそうなってしまうのかもしれない。
「お散歩ですか?」と話しかけたら、高倉健さんも前もってレクチャーを受けているので、「いいえ、宮崎の息子のところに行くところです」と言う。
あえて歩いて行けそうもない目的地を答えたり、自分は高倉健ではないと言ったりする。
一緒に歩いて、警察に連絡(訓練なので今回は町内会長に連絡)するという流れだった。
みんなが外で捜索模擬訓練を行なっている間に、集会所内では炊き出し訓練も行われていた。
前年に熊本地震が起こったこともあり、集会所で炊き出しができるようにと計画された。
1時間以上歩き回り、疲れて帰ると豚汁とおにぎりが準備されていて、みんなで喜んで食べた。
反省会も行われ、みんなが探し回った高倉健(仮名)さん、吉永小百合(仮名)さん、植木等(仮名)さんなど行方不明者役の方が登場したら、とても盛り上がった。
追いかけてこられて取り囲まれて怖かった、優しく声をかけられ嬉しかったなど、行方不明者役の方の感想などが述べられた。
捜索する側も、話しかける際に注意した点や、今回は訓練だけど、実際に自分の親が行方不明になったら、発見して優しく声掛けできる自信がないなどの感想が述べられた。
当時は流されるまま参加した訓練で、初めて行われる行事に最初はみんな硬い表情だったが、終わる頃には団結していて笑顔だった。
自治会(町内会)はめんどくさい、メリットがないと言われるけど、こういうふれあいも時には必要なのだろうと思った。
誰かと話し合って協力することで目には見えない繋がりを感じた。
余談:「あと10年もすればほんとに徘徊するから、俺を見つけたら家に連れて帰ってね」と何人かに言われたが、今のところそうならずに済んでるみたい^^